第2回桐生地区口腔ケア研究会
日時:平成22年7月31日(土)15:00~
場所:桐生市市民文化会館 スカイホール
群馬県桐生市織姫町2-5 TEL 0277-40-1500本研究会は日本歯科医師会生涯研修認定,日本歯科衛生士会生涯研修取得単位対象です。詳しくは各団体の担当者へお問い合わせ下さい。
—《プログラム》—
話題提供(15:00~15:10)
「製品紹介」 味の素製薬株式会社 担当者開会挨拶(15:10~15:15)
桐生地区口腔ケア研究会 代表世話人 塩崎泰雄■ 一般口演(15:15~16:20)■
座長:恵愛堂病院 山田 勲
1.歯科用インプラントが埋入された経口挿管患者に生じた口唇潰瘍のケアについて
全仁会高木病院 看護部 小野恵美子,他4名
2.全仁会高木病院療養病棟における口腔ケアのコストについての検討
全仁会高木病院 看護部 岩松節子,他15名座長:(社)桐生市歯科医師会 小林 司
3.院内での口腔ケアハンドブックの製作とその効果について
桐生厚生総合病院 NST 林 希望,他10名
4.義歯安定剤について
NPO法人群馬県歯科衛生士会 原貴美子座長:桐生厚生総合病院 今井正之
5.入所型介護施設協力歯科医へのアンケート調査結果について 第1報
(社)桐生市歯科医師会 口腔ケア検討委員会 飯野隆司,他11名
6.桐生市・みどり市内の入所型介護施設への口腔ケアに関するアンケート調査結果について
(社)桐生市歯科医師会 口腔ケア検討委員会 須永 亨,他11名
追加発言:(社)桐生市歯科医師会における訪問歯科診療について
(社)桐生市歯科医師会 理事 三丸 潔■ 特別講演(16:30~17:55)■
座長:全仁会高木病院 齋藤義人
「病態時期別に見た要介護高齢者への口腔ケアについて
~急性期からの留意点と介護予防における口腔機能向上支援の役割~」
日本大学歯学部摂食機能療法学講座 植田耕一郎 教授■閉会挨拶(17:55~18:00)■
桐生厚生総合病院 岡田克之■ 懇親会(情報交換会) ■
(研究会終了後,情報交換会がありますした)共催:桐生地区口腔ケア研究会
味の素製薬株式会社
ティーアンドケー株式会社
(社)桐生市医師会
(社)桐生市歯科医師会
NPO法人群馬県歯科衛生士会東毛支部
桐生薬剤師会
(社)群馬県栄養士会桐生支部
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Category Archives: 02-第2回研究会の記録
第2回桐生地区口腔ケア研究会
02-01歯科用Implantの埋入された経口挿管患者に生じた口唇潰瘍のケアについて
02-01歯科用インプラントの埋入された経口挿管患者に生じた口唇潰瘍のケアについて
全仁会高木病院 看護部(歯科衛生士)1),同 内科2),同 口腔外科3)
○小野恵美子1),金丸真奈美1),日永道子1),齋藤義人2),鈴木 円3)
入院患者の口腔内環境は全身状態により左右され,一般的な口腔ケアの知識や技術では対応が難しいことがある。特に急性期病棟やICUでは経口挿管による呼吸管理を行う場合もある。経口挿管患者はバイトブロックや気管内チューブにより口唇,舌,咽頭粘膜などに潰瘍を形成してしまうことがある。
今回私たちは,歯科用インプラントが埋入された経口挿管患者の口唇潰瘍を主訴に依頼を受け,専門的口腔ケアにより改善傾向を示した症例を報告するとともに,経口挿管患者のケア方法や歯科用インプラントのケア方法について報告する。
患者は80歳女性で,うっ血性心不全のため当院内科に入院中である。肺炎を併発し,呼吸状態が悪化したため人工呼吸器装着となり経口挿管となった。当科初診時,上唇正中部にはバイトブロックによる潰瘍,上唇左側には気管内チューブによる潰瘍が形成され,いずれも易出血性であった。また下顎には歯科用インプラントが2本埋め込まれてバーアタッチメントが連結されており,下唇が押し付けられることで潰瘍が形成されていた。そこで強く圧迫されていたバイトブロックを外し,気管内チューブのみの固定にした。毎回の口腔ケア後に,気管内チューブの固定位置を変えた。潰瘍部分はケア後に,ステロイド剤含有軟膏を適量塗布し経過をみた。また下顎の歯科用インプラント埋入部は骨吸収が著しく,インプラント周囲炎を発症していたので除去の適応であったが,全身状態が回復するまで専門的口腔ケアを続けた。その結果、潰瘍は日に日に小さくなり約2週間後には明らかな改善が認められた。その後,患者は心不全の悪化に伴い転院してしまったため,最後まで経過をみることは出来なかったが良好な経過をたどることができた。
経口挿管患者においては,口腔内の細菌が気道内に流入することにより人工呼吸器関連肺炎(VAP)が発症しやすいと言われており,口腔内環境を整える口腔ケアが特に重要となる。そこで私たちは本症例を契機として経口挿管患者に対するケアの手技を統一するため,看護師用のケアマニュアルを作成した。また,口腔内に歯科用インプラントが埋入されている場合には看護師ではケアしきれないため,専門知識をもった歯科医師や歯科衛生士による介入が必要だと考えられた。
02-02 全仁会高木病院療養病棟における口腔ケアのコストについての検討
02-02 全仁会高木病院療養病棟における口腔ケアのコストについての検討
全仁会高木病院 看護部1),同 口腔外科2)
○岩松節子1),川田あけみ1),宮田弘子1),片山昌枝1),山形照代1),遠藤俊枝1)
,田村久美1),金子由加律1),高橋文野1),山崎恵美子1),猪熊幸枝1),赤石八重子1)
,金丸真奈美1),小野恵美子1),日永道子1),鈴木 円3)
口腔ケアの効果についてはさまざまな報告があり,アメリカでは口腔ケアにより肺炎患者が10%減少することで3億ドルの医療費節減効果があるとされている。しかし,個々の病院においては全体の医療費削減効果よりも病院内におけるコストの削減こそが現実に直面している課題である。一方で口腔ケアのコストに関する報告は少ない。今回,われわれは当院における口腔ケアに要するコストについて調査し,検討したので報告する。
方法は当院療養病棟に入院している患者の口腔ケアに要する時間や使用した用品を1ヶ月間にわたり記録し,他施設の報告と比較検討した。
患者一人当たりの口腔ケアにかける時間は平均4.7分/回であり,1回の口腔ケアに要する人件費は95.3円であった。使用グッズの金額は平均346.4円/月であった。対象患者やケアの質,看護師の時給が違うため,単純に比較は出来ないが,滋賀県のA病院では一人当たりの平均ケア時間は6.5分/回であり,1回の口腔ケアに要する人件費は354.8円で,人件費の割合は8割近くと,また静岡県のB病院では一人当たりの平均ケア時間は18分/回であり,1回の口腔ケアに要する人件費,物品費は614円でそのうち人件費が6割を占めると報告している。すなわち口腔ケアにかかるコストのほとんどが人件費であった。したがって,便利なケアグッズを積極的に使用し,同時に口腔ケアの手技やポイントなどの講習を受けることでケア時間を短縮することが結果的に人件費を減らし,口腔ケアにかかるコストを削減することにつながると思われる。
当院ではケア時間の短縮を図るため,歯科衛生士の協力によりケア技術の講習会を頻回に行うと同時に,口腔ケアマニュアルや患者一人ひとりについての指導票を作成してもらうことでケアのポイントを絞り込んでいる。また,「口腔内をきれいにする」という意識でなく,専門的口腔ケアによってきれいになった状態を維持することを主眼におくことでケア時間を短縮できると思われる。さらに,アングルワイダーやデンライト照明ミラーなどを用いることでケアを容易にし,現在の口腔ケアの質を維持したままでのさらなるケア時間短縮を目指している。
今後も低コストで大きな効果をあげられる口腔ケアの体制作りついて検討していくつもりである。