03-08 アバンド™を併用して治療した難治性下唇潰瘍の1例

03-08 アバンド™を併用して治療した難治性下唇潰瘍の1例

全仁会高木病院 栄養科1),同 看護部2),同 口腔外科3),同 内科4)
○仲澤朱実1),村松純子1),櫻井理恵1),日永道子2),根岸恵美子2),金丸真奈美2),片山昌枝2),宮田弘子2),岩松節子2),鈴木 円3),齋藤義人4)

アバンドTMは分岐鎖アミノ酸であるロイシンの代謝産物β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(以下HMBとする)やグルタミン,アルギニンを強化したサプリメントである。HMBはたんぱく質の合成促進と体たんぱく質の分解抑制に働き,抗炎症作用を有する。グルタミンは条件付き必須アミノ酸の一種でたんぱく質とコラーゲンの合成を促進し,免疫担当細胞のエネルギー源となる。アルギニンも同じく条件付き必須アミノ酸の一種で,成長ホルモンの分泌を促し,筋肉強化,コラーゲン合成促進,免疫担当細胞の賦活化に関与する。

今回われわれは,通常の治療に抵抗性を示した難治性下唇潰瘍の患者に対しアバンドTMを併用投与し,良好な結果を得た1例を経験したので報告する。

患者は59歳の男性である。成人大脳型副腎白質ジストロフィーにより視力障害,歩行障害などの症状をきたし,平成21年2月,療養目的に当院へ転院となった。現在は全盲となり,寝たきりで意思の疎通は不可能である。同年6月より胃ろうによる経腸栄養管理を行っている。平成22年5月頃より下唇に出血を伴う潰瘍を生じ,治療を行ったが効果なく,悪化したため口腔外科に依頼された。

下唇ほぼ中央に16×40mm大の易出血性潰瘍を認めたが,周囲に硬結は触れず,歯による褥瘡性潰瘍と診断した。静脈内鎮静法を使用し,全顎の歯石除去を行うと同時に印象採得を行い,マウスガードを作製した。そして上下顎にマウスガードを装着し,ステロイド含有軟膏を塗布した。また口腔外科初診時は,Alb 3.2 g/dLで軽度の栄養不良が疑われたため,経腸栄養を900 kcal/日から1200 kcal/日に増量した。1ヶ月後,Alb 3.6 g/dLと栄養状態は上昇したが,潰瘍は改善を認めたものの治癒にはいたらなかった。そこで,アバンドTMの併用を開始したところ,2週間後には潰瘍は完全に消失し,わずかに瘢痕を認めるのみとなった。

褥瘡性潰瘍の治療には原因となる慢性刺激の除去や栄養状態の改善が必要であるが,通常の栄養素だけでなく,HMBやグルタミン,アルギニンを投与することで治癒にいたる時間を短縮できる可能性が示唆された。最近の報告からHMBやグルタミン,アルギニンはImmuno-nutritionの観点より,多くの可能性を秘めていると思われ,難治性の口腔潰瘍には原因の除去と併せ,アバンドの投与が早期治癒に有用な可能性が示された。

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