03-07 歯に起因した褥瘡性潰瘍について

03-07 歯に起因した褥瘡性潰瘍について

全仁会高木病院 看護部(歯科衛生士)1),同 口腔外科2)
○金丸真奈美1),日永道子1),根岸恵美子1),鈴木 円2)

高齢者や長期入院患者では歯の喪失,義歯の不使用などの咬合状態の変化により,従来は接触しなかった口腔粘膜に歯が当たることがある。歯による慢性的な刺激は時として潰瘍を形成し,疼痛による摂食量の低下や二次感染などをきたす恐れもあるが,意思疎通困難な患者では潰瘍の存在に気付かずに経過することもまれではない。今回われわれは,歯に起因した褥瘡性潰瘍の3例についてその概要を報告する。

症例1:73歳,男性。脳梗塞にて入院中。上下顎は無歯顎で当初は総義歯で摂食していたが,次第に使用しなくなった。頬部の疼痛を訴え,摂食量が低下したため,口腔外科に診察依頼がなされた。左側上顎智歯が半埋伏状態で存在し,歯に相対する頬粘膜に潰瘍の形成を認めた。左側上顎智歯を抜歯したところ疼痛は消失し,3週間後には潰瘍も治癒した。

症例2:62歳,女性。低酸素脳症にて寝たきりで胃ろうによる栄養管理中である。病棟での口腔ケアの際,上唇の潰瘍に気付きステロイド含有軟膏の塗布を行ったが悪化したため,口腔外科に診察依頼がなされた。上顎両側中切歯は残根状態でその鋭縁による褥瘡性潰瘍が疑われた。家族の同意を得て残根歯を抜歯したところ,3週間後には潰瘍は消失した。

その後も義歯作製はできず,経過観察を続けたところ,10ヵ月後には右側舌縁に孤立歯である右側下顎第1小臼歯に起因した潰瘍を生じた。同歯を抜歯したところ,10日後に潰瘍は治癒した。

症例3:87歳,男性。急性硬膜下血腫,認知症にて寝たきりで胃ろうによる栄養管理中である。当院入院後,口腔ケアの際に右側下顎歯肉に潰瘍を認め,口腔外科に診察依頼がなされた。残存歯は右側上顎側切歯と左側下顎犬歯のみで,すれ違い咬合であった。

歯による褥瘡性潰瘍が疑われ抜歯を勧めた。しかし,家族の同意が得られずステロイド含有軟膏の塗布を続けたが潰瘍は改善せず,さらに左側上顎犬歯部歯肉にも潰瘍を生じた。再度抜歯の必要性を説明し,残存歯を抜歯した。抜歯後3週間で潰瘍は全て治癒した。

歯に起因した褥瘡性潰瘍は抜歯などの原因歯の処置が必要なため,口腔内の潰瘍については診断と治療のため,歯科医に依頼することが重要と思われる。また,特に意思疎通が困難な患者に対しては丁寧な口腔ケアを行うことで早期に病変を発見し,治療することが短期間での治癒につながると思われる。

Comments are closed.