02-02 全仁会高木病院療養病棟における口腔ケアのコストについての検討

02-02 全仁会高木病院療養病棟における口腔ケアのコストについての検討

全仁会高木病院 看護部1),同 口腔外科2)
○岩松節子1),川田あけみ1),宮田弘子1),片山昌枝1),山形照代1),遠藤俊枝1)
,田村久美1),金子由加律1),高橋文野1),山崎恵美子1),猪熊幸枝1),赤石八重子1)
,金丸真奈美1),小野恵美子1),日永道子1),鈴木 円3)

口腔ケアの効果についてはさまざまな報告があり,アメリカでは口腔ケアにより肺炎患者が10%減少することで3億ドルの医療費節減効果があるとされている。しかし,個々の病院においては全体の医療費削減効果よりも病院内におけるコストの削減こそが現実に直面している課題である。一方で口腔ケアのコストに関する報告は少ない。今回,われわれは当院における口腔ケアに要するコストについて調査し,検討したので報告する。

方法は当院療養病棟に入院している患者の口腔ケアに要する時間や使用した用品を1ヶ月間にわたり記録し,他施設の報告と比較検討した。

患者一人当たりの口腔ケアにかける時間は平均4.7分/回であり,1回の口腔ケアに要する人件費は95.3円であった。使用グッズの金額は平均346.4円/月であった。対象患者やケアの質,看護師の時給が違うため,単純に比較は出来ないが,滋賀県のA病院では一人当たりの平均ケア時間は6.5分/回であり,1回の口腔ケアに要する人件費は354.8円で,人件費の割合は8割近くと,また静岡県のB病院では一人当たりの平均ケア時間は18分/回であり,1回の口腔ケアに要する人件費,物品費は614円でそのうち人件費が6割を占めると報告している。すなわち口腔ケアにかかるコストのほとんどが人件費であった。したがって,便利なケアグッズを積極的に使用し,同時に口腔ケアの手技やポイントなどの講習を受けることでケア時間を短縮することが結果的に人件費を減らし,口腔ケアにかかるコストを削減することにつながると思われる。

当院ではケア時間の短縮を図るため,歯科衛生士の協力によりケア技術の講習会を頻回に行うと同時に,口腔ケアマニュアルや患者一人ひとりについての指導票を作成してもらうことでケアのポイントを絞り込んでいる。また,「口腔内をきれいにする」という意識でなく,専門的口腔ケアによってきれいになった状態を維持することを主眼におくことでケア時間を短縮できると思われる。さらに,アングルワイダーやデンライト照明ミラーなどを用いることでケアを容易にし,現在の口腔ケアの質を維持したままでのさらなるケア時間短縮を目指している。

今後も低コストで大きな効果をあげられる口腔ケアの体制作りついて検討していくつもりである。

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