02-01歯科用インプラントの埋入された経口挿管患者に生じた口唇潰瘍のケアについて
全仁会高木病院 看護部(歯科衛生士)1),同 内科2),同 口腔外科3)
○小野恵美子1),金丸真奈美1),日永道子1),齋藤義人2),鈴木 円3)
入院患者の口腔内環境は全身状態により左右され,一般的な口腔ケアの知識や技術では対応が難しいことがある。特に急性期病棟やICUでは経口挿管による呼吸管理を行う場合もある。経口挿管患者はバイトブロックや気管内チューブにより口唇,舌,咽頭粘膜などに潰瘍を形成してしまうことがある。
今回私たちは,歯科用インプラントが埋入された経口挿管患者の口唇潰瘍を主訴に依頼を受け,専門的口腔ケアにより改善傾向を示した症例を報告するとともに,経口挿管患者のケア方法や歯科用インプラントのケア方法について報告する。
患者は80歳女性で,うっ血性心不全のため当院内科に入院中である。肺炎を併発し,呼吸状態が悪化したため人工呼吸器装着となり経口挿管となった。当科初診時,上唇正中部にはバイトブロックによる潰瘍,上唇左側には気管内チューブによる潰瘍が形成され,いずれも易出血性であった。また下顎には歯科用インプラントが2本埋め込まれてバーアタッチメントが連結されており,下唇が押し付けられることで潰瘍が形成されていた。そこで強く圧迫されていたバイトブロックを外し,気管内チューブのみの固定にした。毎回の口腔ケア後に,気管内チューブの固定位置を変えた。潰瘍部分はケア後に,ステロイド剤含有軟膏を適量塗布し経過をみた。また下顎の歯科用インプラント埋入部は骨吸収が著しく,インプラント周囲炎を発症していたので除去の適応であったが,全身状態が回復するまで専門的口腔ケアを続けた。その結果、潰瘍は日に日に小さくなり約2週間後には明らかな改善が認められた。その後,患者は心不全の悪化に伴い転院してしまったため,最後まで経過をみることは出来なかったが良好な経過をたどることができた。
経口挿管患者においては,口腔内の細菌が気道内に流入することにより人工呼吸器関連肺炎(VAP)が発症しやすいと言われており,口腔内環境を整える口腔ケアが特に重要となる。そこで私たちは本症例を契機として経口挿管患者に対するケアの手技を統一するため,看護師用のケアマニュアルを作成した。また,口腔内に歯科用インプラントが埋入されている場合には看護師ではケアしきれないため,専門知識をもった歯科医師や歯科衛生士による介入が必要だと考えられた。
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